何か書けたら書いてます

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裕二の話

あゝ、荒野という映画作品があります。菅田将暉くんがこの作品で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を取っているので知ってる人は知ってるかもしれません。前篇と後篇に分かれていますが個々で大体2時間半ぐらいあってトータルだと5時間超える長編です。わたしはこの作品に出てくる山田裕貴くんが演じている山本裕二というキャラクターがめちゃくちゃ好きだという話です。

 

まずどこが好きかということを聞かれるとまた悪い癖が出て「う〜ん…とにかく好き」と言いかねんのでストーリー順に行きます。大量にネタバレをしております。


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↑予告に映る裕二です。 ちょうどこのシーンあたりから裕二の「色」が変わるのでここをチョイスした方は天才ですね。

 

 

まず裕二は主人公の新次とつるんで詐欺を仕掛けたりしながら生きていました。ある日裕二は新次達を強襲します。その後裕二は逃走し、先輩の劉輝は裕二にボコボコにされ重傷を負い、逃げそびれた新次はそのまま捕まります。この映画の主人公は新次なので、もちろん新次の視点で物語も進みます。そのおかげで最初は裕二はなんでいきなり新次たちボッコボコにしてのうのうと生きてんの?と感じると思います。わたしもそう感じました。障害事件起こしておいて自分はプロボクサーになって普通に生きてるんですよ。しかもボクサー。鉄パイプで人殴っておいて殴る職業就いてるんですよ。裕二の第一印象はやべぇよコイツでした。

何度でも書きますがわたしは山田裕貴を推していて、この映画も裕貴くん演じる裕二を楽しみにしていました。だから裕二も好きな役になるんだろうな〜!と思いながら映画館の席についたのにこの印象。この時点では完全に新次側として見てたし、なんならコイツやべぇから新次早くコイツボコボコにしてくれよとまで思ってました。この時点では。

新次も新次で裕二への殺意を募らせていきます。裕二の通うボクシングジムに行き喧嘩を仕掛けますが、裕二は既にプロボクサー。あっさり返り討ちにされてしまいます。その時に素人殴るなと怒られ抑えられる裕二が映るんですけどその時の目が怖すぎて怖い。なにあの目。わたし推しくんの目が本当に好きであの目力があったからこそ興味が湧いたぐらい好きなんですけど、初めてめちゃくちゃ怖いと思いました。いや周りからあの子かっこいいけど目が怖いって言われてきたんですけどね、わたしは怖いというよりかはかっこよくない?かっこいいよ!!!と力説してましたがあれは怖い。怖かった。でもやっぱり好き…。口では謝っているけど何の感情もこもってなさそうな声、瞬きも一切せず一点だけに向いていてどこを見ているのかわからないあの目、あの姿はしばらく忘れられませんでした。普段あんなにきらきらしている目を持っているのに、役によっては目に光が全く入らないんですよね。裕二も光入ってないし入ったとしてもギラついててとてもきらきらとは表現出来ない。どうやって光消してるんだろう。

 

その後新次がボクシングを初めて試合で名をあげた時期、ランニング中にすれ違うシーンで初めて二人が会話という会話をしました。その会話がまた絶妙に合ってなくて、本当に気味が悪かったです。新次は目の前の『今』の裕二の話をしているのに、裕二は『過去』の劉輝先輩の話をする。あの時の行為は許してくれたから、もういいんだと言わんばかりに片付けようとする裕二に対して、新次は『今の思い』をぶつける。裕二は「お前らに認めてもらいたかった」とまた『過去』の話をする。心が不安定になるかと思った。裕二の言ってることがわからない。でもとても好きなシーンです。わたしにとっても大事なシーンでした。その後新次の宣戦布告を裕二は受け入れます。そこでようやく噛み合うのですが、噛み合ってからの新次と裕二の殺意のこもった目線が交錯するところがマジで好きです。

推しが演じている役、それはどんなに悪役でも好きになるポイントがあるはずと思っているし、実際そうだったので推しの役で苦手な役はないんですが、裕二はちょっと危なかった。言ってることがわからない、どこを見ているのかわからない、わからないことだらけで純粋に気味が悪いなと思ったのです。正直推しの役を見ていてこんな感情を持ったのは初めてで、好きな顔や好きな声を持ってて好きな演技をしているのにもしかしたら好きになれないかもしれない…と不安になりつつ、寧ろ憎まれ役としては大成功なのでは…?とも思いました。憎まれ役を全うしつつも、後々裕二はとてつもない感情をぶつけてくるのですが、その持っていき方が上手すぎる。そして新次側として観客をしっかりと味方につける菅田くんもめちゃくちゃ上手いです。新次と裕二の関係性はこのふたりじゃなかったら出来ないと本気で思っています。推しくん裕二役勝ち取ってくれてありがとう…………。

 

話の流れに戻りますが、あんなにやべぇと思っていた裕二には家庭がありました。新次は仲良さそうに劉輝先輩と話す裕二とその奥さんの姿を見ました。嬉しそうに子供を見せている姿を見て新次もわたしもびっくりです。コイツ全然真っ当に生きてるやんけ。

新次の時とこの時で裕二が見せている顔は違っていて、裕二だって普通の人間だし、生活をしているんだとここでやっと気付きました。顔も知らない老人を騙しながら劉輝先輩や新次の背中を見る日々から脱却を図り、後に守るものができた裕二は裕二なりの幸せと、過去にした『過ち』に蓋をして背を向けながら生きていたのかと、どっと裕二への想いが溢れてきました。

前篇は新次の試合を見に来ていた裕二を新次が見つけ、「裕二ーー!!殺してやるからな!!!!!」と叫んで終わる(他にもアドリブで罵詈雑言言ってます)のですが、その時の裕二が覇気なさすぎてめちゃくちゃ不気味で最高でした。

 

続いて後篇の裕二なんですが、中盤あたりでついに新次と裕二の闘いが始まります。もはや闘いというより殺し合いなんですが、これが結構長かったと思います。でも初見はもうそんな長いとか短いとか思ってられないぐらいのめり込んで観てました。

新次は裕二を殺すためにボクシングを始めたほどに裕二に対して憎悪を抱いている。対して裕二は新次のことを『過去に囚われている』と思っていたのではないかなと思う。語られてはいないけど、裕二の中では「もう終わったこと」を新次は未だに引きずってここに来ていると思っていそう。新次からしたら全然終わってない。裕二はプロなので「ボクシングは殺意が強い方が勝つ」ってことも知っていたと思う。それはあくまで試合をする上での話であって本気で殺そうとはしていない。でも新次はガチの殺し合いをしに来ている。新次にあるのはあまりにも純粋な殺意だなと感じた。

どこまでも食い違うふたりだけれど、ここでようやく真っ向からぶつかる。最初こそ試合をしていた裕二だけれど、新次のルールから外れた行為に対し苛立ちを感じ、ついにはラウンドが重なる度に新次の憎悪が裕二を飲み込み出した。途中からもはやボクシングじゃなくなるんですけど、お互い本当に全力で、言葉すら邪魔になるんじゃないかってぐらいぶつかっていて、説明ができません。前篇の拳を震わせながら新次の宣戦布告を受け入れるシーンといい、裕二は新次と深く関わるとだんだん表情が見えてくるんですよね。新次は裕二のことになると感情を剥き出しにするし、お互いがお互いを影響させまくっている。新次以上に裕二のことを理解できる人間はいないんじゃないかなとも思う。

あの頃新次達を殴り過去のことを忘れようとしても、新次は絶対に裕二を捉えて離さない。そもそも新次がボクシングを始めるきっかけから更にムショに出てからやりたいことまで全部裕二に結びついているので、裕二は新次から絶対に逃げられない。

この関係性、良すぎてなんて表現すればいいんだろうかわからないので、エモい…と書いておきます。エモい…

 

新次の重いパンチが当たり膝がつきそうになるシーンがあります。あれ、パンチを受けた時意識が飛んでたらしいです。でも膝がついたら裕二としても山田裕貴としても終わるという気持ちが意識に勝ち、何とか踏ん張り膝をつかなかったというエピソードを見て推しくんすき〜〜〜!!の気持ちが天元突破しました。

わたし最初は完全に新次側で見てたのに、いつの間にか裕二勝って、負けないでって気持ちになってた。闘志を燃やして膝なんてつくものか、絶対に勝つという気迫に飲まれました。いや本当に負けないでほしいって願ってた。裕二が試合で負けたとしても山田裕貴が負けるわけじゃないのに。フィクションで架空の役なのにここまでのめり込むほど応援したのはあんまり記憶にない。ボコボコになっていく裕二を見たら心がしんどくなった。そのあたりからわたしの涙腺もボコボコにされていたのでめちゃくちゃ顔が潰れてた。推しがボコボコにされるのを見るのは寧ろ好きなんですけど(語弊がある)これは無理だった。村山さんとか忠臣さんがボコられてるのは平気(忠臣さんが疲弊しているのはつらいけど)なのに裕二は無理。

結局判定までもつれ込んで、結果は新次の判定勝ち。裕二の殺意より新次の殺意が上回った結果かもしれない。(裕二には妻子という守るものがあるけど新次は恋人すらも置いてきた、その差もあったかもしれない)

結果を受け止め去っていく裕二を見て新次は『悔しくないのかよ!』と問いかけるのですが、わたしは悔しいよ!と言いかけました。わたしの気持ちは聞いていない。新次と観客を残して勝手に去っていってるように感じた。殺しに来たのに殺せなかったし、判定負けというなんとも言えない結果を受け入れてしまった裕二を見た新次の気持ちェ…。最後に劉輝先輩に頭を下げて裕二の出番は終わります。個人的にですが、最後の最後でようやく裕二は自分の中に溜め込んでいたものを出し切ったのかもしれないと感じました。今まで蓋をしてきた『過去』のことを、自分ではもう終わったことと思って封印したものを。やっと解放できたと感じた裕二の表情でした。わたしはその時の表情がとてつもなく好きです。

ちなみにあゝ、荒野の佳境、新次とバリカンの試合では今までの登場人物のほとんどが見に来ているのですが、そこに裕二や劉輝先輩は出てきません。あの試合を見ていた人物はまだ渇きが、荒野が残っていたと解釈しています。裕二がいないのはきっとあそこで全てを解放できたからだと思っています。

 

このように裕二の第一印象は正直「得体の知れない気持ち悪さ」があって、理解が出来ないかもしれないと感じました。理解が出来ないと好きになれない…。でもそれと同時に推しであれば何でも好きになれるわけではないし、寧ろ推しの顔と声と演技を持ってしてもキャラクターを好きになれないのがなんだか嬉しかった。結局めちゃくちゃ好きになるんですけどね。だって裕二の立ち位置って、主人公の宿命のライバルであり主人公が動いたきっかけになった人物だし、役割としては悪役だと思うんです。それを推しくんはしっかり全うしたと思っています。所謂「推しフィルター」があっても裕二の役割が勝ってましたから。推しの演技力の賜物だし、役を生きた結果だと思います。でもただの憎まれ役では終わらせずに、裕二には裕二の正義があるし表面だけでなく側面も見せてくれたおかげで裕二戦が終わった後もよりいっそう強く裕二という印象を残してくれます。やっぱりこういう「この人実はこうなんじゃないか?」と、細かなところでも役の側面を見せてくれる山田裕貴の演技が好きです。そしてリアルですよね…。裕貴くんの役というか演技って生々しいというか、実在してそうとよく思うんですが、裕二は最たるものだと思います。裕二は生きてる……………

あとはオタク的な観点で裕二を見るとまずボクシングスタイルが良いですね。新次やバリカンとは違うヒットマンスタイル、腕が長いから成立するスタイルで、新次と試合してる時にいきなり裕二の腕が出てくるからびっくりした。そしてインターバルで水分補給する裕二の色気がおかしい!好き!

 

 

 

あゝ、荒野のインタビューではこれが凄く好きです。髪型が浩介。

 
「あゝ、荒野」山田裕貴と新宿を巡る! ロケ地マップも - 映画ナタリー 特集・インタビュー


キラキライメージ変えるボクサー役「あゝ、荒野」の山田裕貴さん | 大手小町

 

あとこちらも。坊主になって表情が更に精悍になった気がする。

 
「あゝ、荒野」山田裕貴、菅田将暉と死ぬ気で激突「憧れるのはナシだなと思って」 - 映画ナタリー

 これを読んで思ったのが、推しくん思った以上に菅田くんをとても意識していて、好きだけど負けられない、倒す勢いで挑んでいたというのが分かるなあということです。何だか新次と裕二の関係性をもっと爽やかにしたようなものだなと思ってまたエモくなった…。となりの怪物くんでまたライバルになったのも偶然が生み出した必然だと思っちまうよ…あとこっちでもまた推しくんの役は負ける。なんだかそれすらも愛おしいです。

 

最後に、あまりにも濃い映画で映画としてももの凄く良かったし、これが映画賞を取れる世の中でよかったと思いました。是非見ていただきたい映画ですが最初に書いたとおり前後編で分かれている上に時間も長く、どのシーンも濃密でまともに見ていると相当な体力を使います(わたしはそうでした) 本当に濃密なので体感はそこまで経ってる感じはしないです。少しでも裕貴くん気になるって方は是非観て。後悔しません。裕貴くんがオーディション前から身体を作り、全力で掴み取った山本裕二をよろしくお願いします。

 

 

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これはあゝ、荒野のメインビジュアルで使われていた歌舞伎町ゴールデン街です。行きました。上記のインタビュー記事に出てきた喫茶「らんぶる」さんもめちゃくちゃいい雰囲気でここにいたら実際に新次が来店するかもとか外に出たら裕二がいるかもと思ってしまいます。パフェ美味しいので是非。

 

 

あゝ、荒野 (特装版) Blu-ray BOX

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